2018/11/30

価値観とコミュニケーションと、お金


栃木の山奥の農家さんから「長年使ってる米の乾燥機が止まってしまう。」と相談を受けた。
部品がない、の一言で誰も取り合ってくれなかったらしい。
現場に向かって状況を確認すると、確実に直せることが分かった。
コストを考慮すればロブストスの仕事は最後の手段であることを伝え、まず農家さんが取るべき解決手段を5案ほど一緒に考え、順序立てて整理した。
その場で解決できたわけではない。

真夏に扇風機一つの居間でしばらく雑談して、帰ろうとした時、ティッシュペーパーに包まれた、手汗でくしゃくしゃになったお金を渡された。
量の話ではなく、お母さんの仕草や表情から伝わる気持ちがあり、とても重く感じさせられるお金だった。

「誰も対応してくれなかった。ここまで来て相談に乗ってくれたことが、どれほど嬉しかったか。」

まだ仕事してないから、と何度も断ったけど、
お返しできないほど強く手渡された時、頭を下げて、受け取ることにした。
お金がたくさん余っているような状況じゃないだろう背景を考えると、
これまで以上に、謙虚に腕を磨き続けなければいけないと思った。

とはいえ、口先だけでお金をもらうわけにいかないプライドがある。
帰り道にホームセンターに寄って、簡単に乾燥機が動く可能性のあるアイテムをそのお金で買って、送った。

秋になり、無農薬でつくられた美味しそうなお米と手紙が事務所に届いた。

「困っている人に誠実に寄り添う」商いの本質を、ロブストスの仕事は毎日のように学ばせてくれる。
それはきっと、ものづくりの原点、と呼べるものだと思う。

正直で真っ当なコミュニケーションを積み重ねて、
この先もぼくらの生活がまわっていくのであれば、
どれほど充実した人生を過ごせるだろう。